手縫いにこだわる理由、まず一つは強度です。
上糸と下糸を掛け合って縫うミシン縫いに対し、手縫いはまず、一穴一穴手作業で縫い穴を抜いていきます。
そして、縫う距離の約3~4倍の長さの糸の両端に針を付け、それぞれの針を交差させて縫い上げていきます。糸が糸を押さえていくのです。
よって、糸が切れた時、一気にほつれてしまうミシン縫いに対して、糸が切れてもほつれ難いのが手縫いです。
この時、大事なのが締め上げていくテンションです。
革の厚み、硬さなど作品に応じたテンションで一目ずつ美しく締め上げていきます。
そして、糸の違いです。
手縫いでは、ミシンで使えないような強い糸を使用します。
手縫い用でも、細すぎると切れやすい。太すぎると摩擦しやすい。
糸に撚り(ヨリ)がないと切れやすいが、撚りが強すぎると雰囲気がなくなる。
素材によっては汗など水分を含んでしまう物とそうでない物。
など、手縫い用でも色々種類はありますが、それぞれの特徴があります。
それらを総合的に判断し、最も優れた、作風にマッチした糸を使用しております。
最後にやはり雰囲気です。
ミシン縫いでは表現できない独特なステッチが魅力です。
ミシン縫いで数分で終わる作業も、手縫いで何時間も掛け「一針一心」縫い上げる。
それだけの価値が手縫いにはあると考えます。